珈琲ノート

焙煎の流れ

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前回の「焙煎とは?」が科学的な説明を切り張りした内容が多く堅苦しかったので、今回はもう少し自分の言葉で表現する回にしたいと思います。

焙煎度合い

コーヒーは焙煎の深さによって、8段階のレベルに分かれます。

この中で「ミディアムロースト」「ハイロースト」「シティロースト」「フルシティロースト」は バランスのとれた、誰が飲んでも美味しく感じられる焙煎度合いとされており、当店で通常扱う「中煎り」「中深煎り」「深煎り」はこの4つの区分内に入ります。

前回登場した書籍『おいしさをつくる「熱」の化学』によると、「日本人が好ましいと答えた焼き色はフランス人にとっては薄い場合が多く、日本人がほとんど選ばないような焦げた状態のものでもフランス人の中には好ましいと判断している人がいる」という実験結果が示されており、さらには日本人の中でも食文化や個人の食体験により「焦げ」に対する感覚には広がりがあるそうです。

確かに フレンチローストあたりからは黒光り&オイルを浴びたかのようなツヤが出て、ドキッとする風貌になってくるので、当店では2022年7月現在、極々深煎りは作っていません。(ご希望があれば作ることはできます)

一方、ライトローストは最も浅く焙煎された状態です。強い酸味が特徴で、生豆の青臭さも残っているため、商品としての取り扱いはあまり見かけないと思います。ライトローストはカッピングテストで用いられる焙煎度合いに当たります。コーヒー豆は深く焙煎すると「豆本来の味わい」を鑑定することが難しくなるため、あえて浅煎りに焙煎して 香り、酸の質、甘みなどを判定しています。
焙煎度合いを7段階で説明される方は、このライトローストを省くようです。

焙煎の流れ

基本的な焙煎の流れは以下の通りです。

【生豆投入 → 水抜き → 1ハゼ → 2ハゼ → 冷却】

それぞれの工程について説明していきます。

【生豆投入→水抜き】

十分に温まった焙煎機に生豆を投入し、最初の段階は豆の水分を飛ばす工程です。複雑な温度変化が起こるこの工程では火力や排気の調整を行い、豆に十分なカロリーを与えることが必要になります。スタート直後の緊張感と集中力を維持し、豆の旨みを引き出す大事な工程のため、できれば話しかけてほしくないタイミングにあたります。

パイロットの気持ちになると、「離陸OK」指示を受けて滑走路を走りだし、ふわっと浮き上がり、指定高度までぐんぐん上昇し、飛行を安定させるまでのイメージでしょうか。気流の乱れ等 外部条件(気温や湿度、気流)はもちろん、乗客(豆)の様子に目を配りながら、高度計・速度計(温度計・ガス圧計)とにらめっこしながら操縦桿(ガス圧・ダンパー)を操作する工程です。 そろそろ飛行機に乗って旅行に行きたい…。

【→ 1ハゼ】

水抜きが終わり、焙煎をさらに進めると1ハゼを迎えます。

豆の表面に近い部分の水分が気化し、豆が膨らんで組織が破壊され、「バチバチ」というハゼる音が聞こえてきます。1ハゼは2分ほど続きます。

1ハゼの頃で焙煎を止めたものがミディアムローストです。
中煎りと呼ばれる程度で、非常に飲みやすい、軽い味わいになります。
当店の商品で言うと、エチオピア、ニカラグアの中煎りがこの工程で排出→冷却になります。

1ハゼ終わりから次の2ハゼ開始までの間で焼き上げると、ハイローストになります。深すぎず、飲みやすく、全体的にバランスのとれた頃合いの焙煎度合いで、こちらが中深煎りとなります。
当店では、グアテマラ、エチオピア、ペルーで中深煎りを作っています。

深煎りに到着するまでは、気象条件を見ながら高度や進行方向を調整しつつ安定飛行を続けます。

【→ 2ハゼ】

1ハゼが終わってから1〜2分後に2ハゼが始まります。
これは油脂成分が気化することによる「爆ぜ」です。「パチパチ」と1ハゼよりも軽めの高い音がします。
豆の成分の熱による化学反応もさらに激しくなり、秒単位で風味が変わっていきます。

この時も「話しかけないでください」オーラを出しながら、左手でガス圧調整ダイヤル、右手で排出レバーを握りしめて「その時」を待ちます。


パイロットの気持ちに戻ると、ポイントを見定めて確実に着地(排出)し、前後車輪の着陸状態を確認すると共に逆噴射をかける(冷却)一連操作の慌ただしさと緊張感をイメージします。 …飛行機恋しい乗客目線の想像です。

当店では、豆の特徴に合わせて、シティローストとフルシティローストの間で焼き上げるタイミングを調整したものを「深煎り」としています。

【→ 冷却】

狙いの焙煎度に到達したら一気に排出してコーヒー豆を冷却して終了です。すぐに冷まさないと、豆が帯びた熱で、さらに焙煎が進んでしまい意図した風味にならなくなってしまいます。

この工程で、欠陥豆のチェックを行います。

◆ハンドピック

「欠陥豆」について触れたので、当店ではどのように欠陥豆を除去しているかをお伝えします。

高品質なスペシャルティコーヒーなので、そもそも欠陥豆は少ない とされていますが、それでも稀に小石が混じったり、欠けた豆や虫食いなど 風味に影響を与える豆が混じっていることがあります。

当店では3回、欠陥豆除去作業を行っています。

まず、焙煎前の計量時に生豆の状態でチェックをします。

次が焙煎後の冷却時です。冷却機がくるくると回るので豆を多角的にチェックでき、この工程が一番発見しやすいです。

最後に、商品として袋に投入する前の計量時にバットに広げて最終チェックを行っています。

以上が、欠陥豆の除去「ハンドピック」という工程になります。

師匠から、「疑わしきは迷わず除去!」という明確な判断基準を与えて頂いたので、「このレベルなら豆の個体差とも言えるかな?」という物も除去します。(焙煎後に除いた疑わしき豆は自家消費に回しています)

少量生産が故に目が届き渡り、品質に自信をもって提供することができています。

スペシャルティコーヒーの中であっても、豆の種類によって欠陥豆の含まれる率が違います。生産国のお国柄が現れるのでしょうか?

◆焙煎機の生産量

当店で使用している焙煎機はFUJI ROYALの discovery という機種です。
1回あたり生豆250gまで投入できますが、試行錯誤の末 投入量は調整しています。
生豆に含まれる水分が焙煎によって飛ばされるので、焙煎豆としてできあがるのは投入量の20%減になります。

焙煎を開始するまでの準備段階(機械を適温にする工程)は別として、1回あたりの焙煎時間(豆を投入してから排出するまで)は 10分前後です。インターバルタイムを入れると現状、1時間当たりの生産量は650g~750g程度です。

1回あたりの焙煎量が増えても焙煎工程にかける時間はあまり変わらないので、大きな機械であれば生産効率も上がり、温度コントロールしやすく味も安定するといわれているのですが、数百万円の大きな焙煎機を導入するにはかなり勇気のいる投資になります。
身の丈に合った商売という意味でも、しばらくは小回りの利くこの小型焙煎機でお客様の好みに合わせた焙煎ができる体制を続け、味を自在にコントロールできる技術を磨き上げる所存です。

今の機械では生産が追い付かなくなる時が来たら、松田屋珈琲はステージアップです。
皆様のご支援ご協力の賜物です。(未実現)

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